INTRODUCTION 作品紹介

――あなたの世界は、何色ですか?

鑑賞者の感覚にダイレクトに影響を与える没入型デジタル絵画、『パーセプションアート』が生まれておよそ10年。
今やすっかり世の中に浸透し、人々の生活を彩っている。

パーセプションアートの生みの親にして著名な『アーティスト』でもあった月見里夫妻の息子・月見里和哉は、幼馴染の都築純とともに、自身もパーセプションアーティストになるという夢を抱いて美術分野の名門・永茜高校に入学したばかり
そんな和哉には、もうひとつの目的があった。
それは、10年前に起った『ある事件』をきっかけに自分のことを避けるようになった、“もうひとりの幼馴染”との友情を取り戻すこと……。

パーセプションアートの生みの親にして著名な『グレーダー』でもある父を持つ多岐瀬響は、永茜高校パーセプションアート学科のグレーダー専攻に通う3年生。和哉や純とは家族ぐるみの幼馴染だが、もう何年もの間2人を避け続けている。
響の心には、決して明かすことのできない傷跡があった……。

ぶつかり合い重なり合う、様々な“色”と“色”。
彼らの目に映るその景“色”とは?
今描き出される、青春【アート】ストーリーの世界へ、ようこそ。

用語解説

パーセプションアート

実作業担当の『アーティスト』とプロデュース担当の『グレーダー』で作成する絵画の新分野。基本は2人1組のペア制を用いている。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚などの感覚にダイレクトに影響を与え、鑑賞者を作品世界に完全没入させることの出来るデジタルアートである。生み出されてから10年余りと歴史は浅いが、今やすっかり世の中に浸透し、宣伝広告など商業目的に使用されたり、旧来の絵画と同様に芸術作品として高い価値が付いたりもする。

かつては「芸術作品が本来ひとに与えるべき影響を逸脱している」として危険視する声もあったが、現在は資格制度を導入して作り手や作品をしっかり管理することで、安全だと認められている。

<アーティスト>

特殊な画材を用いて、実際にデジタル空間に作品を描く実作業担当者。コンセプトやテーマを決めるのはグレーダーだが、そこからイメージを膨らませて作品を形成するにあたっては、アーティストの感性やセンス、実力が大きく作用する。

<グレーダー>

クライアントからの依頼を受け、作品のコンセプトやテーマを決定し、相応しいアーティストに発注をするプロデュース担当者。最終的な作品の出来をジャッジする立場でもあるため、グレーダーがイニシアチブをとっているペアが一般的。

パーセプションアートを描くためのデバイス

<支持空間>

パーセプションアートにおける『キャンバス』にあたる、デジタル空間。かつては限られた一部の区画のみに展開されていたが、今ではかなり広域にわたって展開されている。

<ゴーグル>

支持空間を可視化するためのガジェット。
空間酔いなどの身体への悪影響を防止するため、装着しっぱなしは禁止されている。

<グローブ>

パーセプションアートにおける『ペン』『筆』『絵の具』等にあたるデバイス。装着することで支持空間にものを描くことが出来る。主にアーティストが用いる道具。

<フレーム>

支持空間上に描いたパーセプションアートを収める、専用の額縁。フレームに収めることでパーセプションアートはゴーグルなしでも見られるようになる。一度作品を収めると取り出すことは出来ず、作品のコピーや入れ替えは不可能となる。

永茜高校関連

<ジェネラルズ>

永茜高校パーセプションアート学科生の相談役兼お目付け役。系列美大に在籍する学生の中から適性のある者が毎年選出される。

<色亡き額縁>

永茜美術館のエントランスホールに設置されている空(から)のフレーム。
本来は月見里夫妻の描いたパーセプションアートが飾られるはずだったが……。

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